【報告】2017/4/22 犀の夜02
犀の夜02 4月22日(土)19時~
成田トシロウ(朗読)
キムジー(踊り)
伽藍座長(ひとり芝居)
うめむらこうじ(歌うたい)
2回目の<犀の夜>だ。今回は朗読、踊り、演劇、歌と異なるジャンルから多彩な“犀”が集まった。20名ほどの観客の中、GOKUさんの掛け声「犀!犀!」でスタート。
成田トシロウさんは萩原朔太郎の短い詩と、中島敦の『山月記』を朗読。低く落ち着いた声。詩人になり損ね、気がついたら虎になっていた男が友人に吐きだす嘆き。成田さんの低い声とあいまって悲しく聞こえる。繊細な心の動きが丁寧に表現される。成田さんの身体は舞台上にあるけれども、そこにあるのは<演技をする身体>、あるいは<見せるための身体>ではなく、<読むための身体>だけがそこにあり、客席には声だけが聞こえてくる印象。心地よかった。語りと身体の関係についてまた考えることになりそう。
キムジ―さんは、梅津和時のフリージャズで5曲たっぷり踊った。白塗りの体に黒いジャケット、腰巻にシルクハットという出で立ち。今まで着物で踊っているところは何度か観ているが、欧風(?)の装いははじめて。狂ったようなサックスとくっついたり離れたり。ゆっくりと音との絡らみあう姿が時にかわいらしく、時にかっこよく見えた。曲が進むにつれて次第に踊り手の集中も高まっていく。観客も食い入るように見つめている。背中を見せて踊るシーンが多い印象。そういえば犀の角で初めての舞踏だ。黒く塗った舞台が粉で次第に白くなっていく。それもまたよし。
静岡からの刺客、伽藍座長の一人芝居。佐藤さん(座長のことです)が演出した舞台は静岡で何度も観ていながら、一人芝居は実は今回が初めてで、しかもそれを上田で見ることになろうとは。話としては、娘が結婚することになり、その相手と娘不在の場で話ことになったその父親との緊張感あふれるやり取りを描いたもので、父親役のみが登場する。話が進むにつれてデキ婚であることが判明して…。相手の姿は見えないのに、性格までわかるようにセリフが仕組まれている。誰が見ても楽しく笑えるお話でした。佐藤さんの飄々とした立ち姿を見つめながら、この人は演劇をやめないだろうなと思う。遠くからありがとうございました。
トリは、うめむらこうじさんのアコースティックギターと歌。昨年の上田千曲高校演劇班の公演の前座で演奏していただいて以来で、とても楽しみにしていたライブだ。うめむらさんの詩の世界がとてもいい。特別なことはないけど、背伸びをせず、自分と自分をとりまく世界を大切に生きている感じ。張りがあってよく伸びる歌声。ギターは硬めでよく響く。キャップ帽にちょっとくたびれたTシャツとスエットという出で立ちもたまらない。「君はコンビニでビールを買ってしまった」は聞きに来ていた子どもも大喜び。「オムライス」は泣ける、誰にも負けないぞって感じが。もっともっと多くの人に知ってほしい<歌うたい>だ。
すべてのプログラムが終わった後は、観客も表現者も一緒のバータイム。あちこちで話に華が咲いていた。特に佐藤さんと成田さんは深夜まで演劇談義で話し込んでいました。一升瓶とともに。
出演いただいた表現者のみなさん、ありがとうございました。とても刺激的な夜でした。
次回の犀の夜は7月1日(土)の予定です。いろんなジャンルのソロアーティストによる表現をいっぺんに楽しめる<犀の夜>。自分にとって未知のジャンルや表現者に出会う可能性に満ちています。ぜひ一度お出かけください。